資格試験第一弾ボイラー技士免許

過去記事から、今回は職業訓練のボイラー技士免許受験記。まさかサラリーマンを終えてから資格試験に臨むことになるとは思わなかったが、いまにしてみると脳の活性化にたいへん役立ったと思います。以下は2017年4月、もう7年前の記事になる。
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職業訓練校ポリテクセンターに入って1ヵ月余り、ようやく周りの方々の顔を覚えたとたん、資格試験第一弾である二級ボイラー技士免許試験の当日となった。

巷間言われるところでは、それほど難易度の高い試験ではないものの、何と言っても還暦間近になって初めて勉強する分野である。覚えが悪い上に、過去の経験から類推できる部分もきわめて少ない。丸ボイラーと水管ボイラーのどっちがどっちだか知ったのはここ1ヵ月だし、水面計のメンテナンスだのボイラー設置にかかる手続きだのの講義を受けたのは試験1週間前である。

おりしも前日から強い冬型の気圧配置で、風がすごく強い。風が強いと内房線はすぐ止まってしまうので、念のため早く家を出る。五井に着いたのは11時半前、まだシャトルバスは来ていなかった(11時50分から)。ちょうど乗合タクシーが「あと一人」と言っているので、600円払って乗る。禁煙なのにすごくタバコくさいタクシーだった。

会場である関東労働衛生技術センターは、もともと労働省の外郭団体で、ボイラー技士はじめ厚生労働省管轄の免許試験を実施している。五井駅から市役所の横を抜け、さらに山の方に入る。ゴルフ練習場のすぐ脇が試験会場で、なんだか官庁が買うような土地ではないようだった。どうせなら、かずさアカデミアパークにすればよかったのに。

それはともかく、センターの建物に入る。自動販売機はあるが、食堂・売店はない。1階ロビーの椅子が空いていたので、座って最後の復習。ほどなくシャトルバスの人達も入ってきて試験会場のある2階に上がって行った。2階にもロビーがあるし、会場の自分の席でも参考書を見ることはできる。開始時間が近づくと、会場のそこここに毎日合わせる顔が見られるようになった。

試験会場は1人席で、学校みたいである。1教室に140席あって、3教室使っていたから、この日受けたのは400人余りということになる。きょうびボイラーを使っている事業所はあまりないような気もするのだが、受験者は結構いるようである。女性の姿もちらほら見かけるし、若い人も多い。

試験開始15分前から説明が始まる。机の上にはシャーペン、消しゴム、定規と受験票だけ置いて、筆箱・携帯その他は電源を切って荷物の中にしまうこと、開始後1時間は終わっても退室できないこと、試験中に本人確認に回るので、顔を上げて確認させることなどの注意を受ける。

そして、まず解答用紙が配られる。マークシートである。最初に受験番号と氏名、受験種類を記入する。解答欄が44問まであって「聞いてないよー」と思ったが、「本日の試験は40問ですので、41問から後は何も書かないでください」と説明があった。おそらく、他の免許試験の解答用紙と共用しているんだろう。

次に問題用紙が裏向きに配られる。B4なので机からはみ出しそうだが、「2ページ以降を見る時は問題用紙を折り畳んで見てください。問題用紙を立てて読んだり、机の前から垂らしたりすると、不正行為の疑いを受けることがあります」と注意がある。午後1時半試験開始、制限時間は3時間である。

二級ボイラー試験は40問。構造、取扱い、燃料・燃焼、法令の4部門でそれぞれ10問ずつ。合格ラインは60%、ただし、各部門それぞれ40点はクリアしなければならない。問題はすべて5択で、半分以上が「この中で誤っているものはどれか」である。

この試験は過去の出題問題が公表されており、それをみると正誤が明らかなサービス問題がほとんどである。やってみると9割以上は正解だったので、試験前にはそれほど心配していなかった。ところが実際の試験は公表問題よりいやらしい問題が多く、教科書の細かいところを聞いてくる問題も結構ある。

よく考えると公表問題はあくまでモデルであり、試験回数は何十回もあるけれども公表されるのは半年に1回なので、モデル問題そのものが出る訳ではない。それに、後からセンターのHPを調べたところ、二級ボイラーの合格率はちょうど60%である。つまり、4割は合格ラインに達しないということである。
 
という訳で、試験が始まった。最初の2問はサービス問題だったので安心して始められたが、3問めからいきなり細かいところを突いてくる。5択のうち3つは明らかに違うのだが、残りの2つでどちらか確信が持てない。その次がマンホールの問題。周継手・長手継手は覚えてきたのに、「胴の軸」と言われてどちらか確信が持てない。これも2分の1の確率である。

その後もいやらしい問題が続く。火炎検出器の問題では、過去問では形式と検出方法の段階ですでに誤りがはっきりしていたのに、実際の問題はそこまでは合っていて(整流式光電管=光電子放出現象、とか)その後の説明が違うのである。これでは確率5分の1である。

取扱いでは自動制御とデュフューザポンプが出る。あまり準備していない分野であるので、ここも確率2分の1まで。アルカリ腐食の「水酸化カルシウム」のひっかけ問題には何とか持ちこたえたものの、この薬品は何の効果がありますかという、想定とは逆の問いをされて参ってしまう。

燃料・燃焼は比較的過去問に近い問題が多かったけれども、法令は講義を1日で終わらせてしまったものだから、あまり勉強していない分野がある。その勉強していない分野であるところの溶接試験と構造試験、使用再開試験が出たのだから恐れ入る。

40問終わってカウントすると、ほぼ大丈夫だろうと思えるのは25問。残り15のうち半分は2分の1まで絞れたがそこまでだし、あとの半分はあまり自信がない。ほぼ大丈夫だと思ってもケアレスミスがあるので、自信のない15をすべて外してケアレスミスを2つやったら不合格である。受験料6,800円と往復の交通費、合わせて1万円が無駄になってしまう。

制限時間は3時間あったが、1時間と少しで見直しを済ませ、これ以上考えても分からないものは分からないので、3時少し前に退室する。試験を終えたのは早い方なのに、すぐに向かったシャトルバスはほぼ満員だった。結果発表は1週間後の2月28日。本人宛に結果が郵送される他、センターの掲示版(建物前にあるリアルな掲示板である)とホームページに掲載される。

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1週間後の2月28日に試験結果が発表された。結果は辛くも合格。ひとまずほっとする。発表された合格者番号を見ると合格率は50%程度、昨年一年間の合格者の比率が60.4%だから、有意に低かったということである。あの問題ならそういうことになっておかしくない。それくらい意地の悪い問題だった。

ポリテクセンターで周囲の人達の結果を聞くともなしに聞いていると、何人かは不合格の人がいたようである。しかし、丸18日間(うち3日間は危険物だが)講義を受けてきて、全員合格できないというのは何なのかと思う。もちろん、職業訓練は資格試験の予備校ではないのだけれども、「ここは試験に出ませんから」などと一部を教えなかったりしているのだ。

思うに、テキスト(自己負担)やら過去問(これは無料)やら提供しているのだから、あとは自分でやれ、無料の講義に期待するなということではあるのだけれど、講師はボランティアではなく、雇用保険から給料が出ている。結果につながらない講義をしても給料がもらえるというのは、職業訓練の見地からみても好ましくないことなのではないかと思う。

もちろん、訓練校の講師はまじめに取り組んでいる人が多いのは分かるのだが、ことボイラーに関しては、講義内容が十年一日、全く工夫がなく資格試験対策にもあまり効果がないものであった。この分野は実際に従事している人が少なく、70過ぎのじいさまがいまだに講師をやっているという時点で疑問符が付くのではあるが。

五井の山奥にある関東安全衛生技術センター。免許試験がある時は、シャトルバスと乗合タクシーが運行される。
p.s. 職業訓練関係記事のバックナンバーはこちら

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