旭川馬場ホルモン

いまでは気軽に行けなくなってしまったが、北海道には何度も足を運んだ。学生時代から社会人初めにかけて8年連続、結婚して子供を連れて8年連続、夫婦だけになってからも何回も出かけた他に、仕事の出張でも10回以上行った。

下の記事はちょうど10年前、2014年7月Blog掲載。その頃、ギリヤーク尼ヶ崎がまだ車イスになる前で、やるかやらないか直前まで分からない公演を目指して出かけ、あえなく空振りということもあった。この日はまた空振りと早合点して飲みに行ってしまい、実はその後に公演があったことが後から判明した。でも、いまだに奥さんと語り草になるすごい店だった。

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仕方ないとはいえギリヤーク旭川公演は見られなくて、夕方からの日程が全く空いてしまった。そこで選んだのがこの店である。旭川というとジンギスカンの老舗である「松尾ジンギスカン」が有名であるが、いまや全国に出回っている。創作えぞ料理ペロンタンの「はなまる亭」も有名だが、ここは以前行ったことがある。

そこで一部で評判の塩ホルモンの店、「馬場ホルモン」を選んでみた。旭川は昔から養豚業が盛んな土地で、こちら馬場ホルモンは塩モツを早くから始めた店の一つとされている。ちなみに「豚トロ」も旭川が発祥である。買物公園通りを北上し、7条あたりで折れて少し東に進む。路地の奥に、馬場ホルモンの看板が見える。

終戦直後のバラックのようで入るのに勇気がいるが、まだ時間が早いため戸が閉まっている。1時間ほど散歩してくると、今度は入口が開いていた。すみませーんと声をかけると、おばさんが登場。4時半から開店とのことで、ちょうど暖簾を出すところだった。中は思ったより広くて、座って食べられる席もある。開店直後の最初の客なので、カウンターの一等席に案内された。

WEB情報どおり、メニューはない。おばさんが、「2人前ね」と言って七輪を持ってきて、塩モツを2人前と塩を振ったタマネギを用意する。目の前に大きな冷蔵庫があって、瓶ビールやチューハイ、ジュースが置いてある。この日のビールは、スーパードライ、サッポロ黒ラベルとモルツ生であった。モルツ生からスタートする。

まだ他にお客さんかいなかったので、モツの焼き方を教えていただく。「カルビじゃないから、片面ずつしっかり焼いちゃだめ。すぐにこげちゃうから。転がしながら、何回もひっくり返して焼くといい」とのこと。そうしている間にも、頻繁に電話が入る。予約の電話よりも、テイクアウトの電話が多い。一回などは、宅配伝票を書き出したので、遠方からの注文のようであった。

焼きあがったらそのまま食べる。場所によって、こりこりしたりレバーっぽいところもある。メニューはないので出されたところを食べるしかないが、絶妙の下味が付いていて、どこもおいしい。そして、全然モツくさくないのは、七輪で余計な脂が落ちるからだろうか。WEBでは店中モツの匂いで大変と書かれていたけれど、まだお客さんが少ないのでそういうこともない。

だんだん焼き方も手慣れてきて、焼きすぎないのがコツだと分かってくる。付け合せの塩を振ったタマネギがまたおいしい。奥さんも感激している。ビールもどんどん進む。時間が早いせいかおばさんが一人で切り盛りしているので、準備中に中断させてしまうのが申し訳ない。最初から2本ずつ頼むべきだっただろうか。

奥さんによると、もう4、50年前のこと、蕨(京浜東北線)の駅前にはこういう焼肉のお店がいくつもあって、店構えはすごいんだけど味は超抜だったそうである。そういえば、私の学生時代にも、渋谷の奥に汚くて安い焼肉店があって、何回か行ったことがあった。あのあたりはバブルで再開発されてしまったが。

5時過ぎて、仕事帰りのお客さんがどんどん入ってきた。おそらくこれから店内は満員になると思われた。店構えだけみると少し不安になるが、持ち帰りや宅配もあり、これだけお客さんが付いていれば十分やっていけるはずである。そして、こういうお店は変にきれいなビルに移転してしまうと、良さがなくなってしまうように思う。このままがいい。

地元の飲み屋さんに入ってこれだけおいしいものを食べられたのは、久しぶりのことであった。聞くともなしに聞いていると、モツのテイクアウトは3人前で1000円ちょうどだそうで、うちは3人前+ビール4本で3000円ちょっと。やっぱり安い。ともかく奥さんが大感激で、帰ってきたとたんにまた行きたいと言っているくらいである。

p.s.「飲む話食べる話」のバックナンバーはこちら

外から見た馬場ホルモン。ただし昼間はやってなくて4時半からです。夜になってお客さんが集まりだすと、もう少しにぎやかになる。
こんな感じで、七輪で塩モツを焼いて食べます。奥さん大感激!

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