前回、馬場ホルモンについて昔の記事を上げたけれど、「飲む話食べる話」は沖縄についても書いた。
北海道が学生時代からなのに対し、沖縄に初めて行ったのは四十代になってから、会社の出張だった。以後プライベートも含めて何度も足を運ぶことになったが、食べ物が独特なのでたいへん面白い。豆腐よう、島らっきょう、海ぶどう、ジューシイ、イラブー汁など、沖縄に行かなければ食べなかっただろう料理は多い。
以下は2011年1月の記事。奥武山公園でポーカーの集まりがあって、ついでに泡盛がたくさん置いてある店やガレッジセールご推薦の沖縄そば店に行ったのだった。
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沖縄に行って食べなければならないものの一つが沖縄そばであることは言を待たないところであろう。
そばといっても、沖縄では「そば」は生産されない。小麦粉で作られるから本当は沖縄うどんというのが正しいのかもしれない。もっともラーメンを「中華そば」というくらいだから、それはそれでいいのかもしれない。また、ソーキ(軟骨付きの豚バラ肉)が入れば当然ソーキそばになる。さらにいえば沖縄では「お」段は通常発音されないので、「そば」ではなくて「すば」である。
長寿マンガ「クッキング・パパ」の連載開始当時(つまり二十年以上前)、沖縄編があった。その中で、「国際通りの店は観光客に合わせて味を変えているので、本来の味ではない」というようなことが書いてあって、それが非常に印象深かった。考えてみればその土地ごとに味覚には違いがあるのは当然で、東京と大阪だって昔は味付けが違ったものである。
その後、初めて沖縄に行ったのは十数年前のことである。刺身も全然違うし、イラブー料理も食べるのには勇気が要った。足てびちは未だに苦手である。ところが、ソーキそばだけは、最初からあまり違和感なく食べられた。ソーキの軟骨は最初食べるところではないと思っていたのだけれど(今では食べられます)、そばつゆの味付け自体に違和感がなかったからである。
ところが今回の沖縄では、もともとの沖縄そばの味ではないかと思われる店に出会った。場所は牧志公設市場の奥。市場の奥の方に行くと入り組んだ建物が上でつながっていて、まるで香港かマカオの旧市街にいるような錯覚さえ感じる。その中に沖縄そば店「田舎」(いなか)はあるのだった。
「ガレッジセール」(当然、沖縄出身である)がどこかの番組で紹介したらしく、店の前にそんなことが書いてある。ただ、この日は公設市場の休業日のせいか、結構すいていて先客は一組だけ。カウンターに腰掛けてソーキそばを注文する。なんと350円。那覇では最も安いと書いてある。確かに、空港の半分以下の値段である。
注文するとほどなく、ソーキそばが出てくる。駅そば並みの速さである(沖縄には駅そばはない)。まず、何も入れずにだしを味わってみる。濃厚な豚のスープ、他店の味とはちょっと違う。
空港の4階をはじめ、観光客が行くような沖縄そばの店では、ほぼ例外なくめんつゆはかつおと豚のブレンドだしである。チャンプルーもかつおだしで味付けしているところが多い。ところが、田舎のそばつゆは豚だけでとったスープのようである。だから、紅しょうがとコーレーグス(唐辛子の泡盛漬け)を入れると一味も二味も違う。
これまで食べた沖縄そばは、コーレーグスを入れる意味が今ひとつ分からなかった。入れなくても十分においしく感じるからである。しかしかつおだしの味がないと、コーレーグスを入れるのと入れないのとでは全然違うのである。これは、新たな発見であった。
もしかすると、もともとの沖縄そばの味とは、ソーキを茹でたスープをだしにして、麺もラードをからめた、もっと豚の味が濃厚なものだったのかもしれない。だから紅しょうがとかコーレーグスで酸味・辛味を加えることによってアクセントをつけたのではないだろうか。
かつおだしをブレンドしたのは、本土からの観光客の味覚に合わせたのが、そもそもの始まりだったのかもしれない。そんなことを考えながら、「田舎」のソーキそばを味わった。コーレーグスの辛味で、1月だというのに汗が噴き出してきた。
p.s. 「飲む話食べる話」沖縄編はこちら。
「田舎」のソーキそば。豚のスープが濃厚です。紅しょうがは自分で入れました。コーレーグスを入れるとおいしい。
北海道が学生時代からなのに対し、沖縄に初めて行ったのは四十代になってから、会社の出張だった。以後プライベートも含めて何度も足を運ぶことになったが、食べ物が独特なのでたいへん面白い。豆腐よう、島らっきょう、海ぶどう、ジューシイ、イラブー汁など、沖縄に行かなければ食べなかっただろう料理は多い。
以下は2011年1月の記事。奥武山公園でポーカーの集まりがあって、ついでに泡盛がたくさん置いてある店やガレッジセールご推薦の沖縄そば店に行ったのだった。
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沖縄に行って食べなければならないものの一つが沖縄そばであることは言を待たないところであろう。
そばといっても、沖縄では「そば」は生産されない。小麦粉で作られるから本当は沖縄うどんというのが正しいのかもしれない。もっともラーメンを「中華そば」というくらいだから、それはそれでいいのかもしれない。また、ソーキ(軟骨付きの豚バラ肉)が入れば当然ソーキそばになる。さらにいえば沖縄では「お」段は通常発音されないので、「そば」ではなくて「すば」である。
長寿マンガ「クッキング・パパ」の連載開始当時(つまり二十年以上前)、沖縄編があった。その中で、「国際通りの店は観光客に合わせて味を変えているので、本来の味ではない」というようなことが書いてあって、それが非常に印象深かった。考えてみればその土地ごとに味覚には違いがあるのは当然で、東京と大阪だって昔は味付けが違ったものである。
その後、初めて沖縄に行ったのは十数年前のことである。刺身も全然違うし、イラブー料理も食べるのには勇気が要った。足てびちは未だに苦手である。ところが、ソーキそばだけは、最初からあまり違和感なく食べられた。ソーキの軟骨は最初食べるところではないと思っていたのだけれど(今では食べられます)、そばつゆの味付け自体に違和感がなかったからである。
ところが今回の沖縄では、もともとの沖縄そばの味ではないかと思われる店に出会った。場所は牧志公設市場の奥。市場の奥の方に行くと入り組んだ建物が上でつながっていて、まるで香港かマカオの旧市街にいるような錯覚さえ感じる。その中に沖縄そば店「田舎」(いなか)はあるのだった。
「ガレッジセール」(当然、沖縄出身である)がどこかの番組で紹介したらしく、店の前にそんなことが書いてある。ただ、この日は公設市場の休業日のせいか、結構すいていて先客は一組だけ。カウンターに腰掛けてソーキそばを注文する。なんと350円。那覇では最も安いと書いてある。確かに、空港の半分以下の値段である。
注文するとほどなく、ソーキそばが出てくる。駅そば並みの速さである(沖縄には駅そばはない)。まず、何も入れずにだしを味わってみる。濃厚な豚のスープ、他店の味とはちょっと違う。
空港の4階をはじめ、観光客が行くような沖縄そばの店では、ほぼ例外なくめんつゆはかつおと豚のブレンドだしである。チャンプルーもかつおだしで味付けしているところが多い。ところが、田舎のそばつゆは豚だけでとったスープのようである。だから、紅しょうがとコーレーグス(唐辛子の泡盛漬け)を入れると一味も二味も違う。
これまで食べた沖縄そばは、コーレーグスを入れる意味が今ひとつ分からなかった。入れなくても十分においしく感じるからである。しかしかつおだしの味がないと、コーレーグスを入れるのと入れないのとでは全然違うのである。これは、新たな発見であった。
もしかすると、もともとの沖縄そばの味とは、ソーキを茹でたスープをだしにして、麺もラードをからめた、もっと豚の味が濃厚なものだったのかもしれない。だから紅しょうがとかコーレーグスで酸味・辛味を加えることによってアクセントをつけたのではないだろうか。
かつおだしをブレンドしたのは、本土からの観光客の味覚に合わせたのが、そもそもの始まりだったのかもしれない。そんなことを考えながら、「田舎」のソーキそばを味わった。コーレーグスの辛味で、1月だというのに汗が噴き出してきた。
p.s. 「飲む話食べる話」沖縄編はこちら。
「田舎」のソーキそば。豚のスープが濃厚です。紅しょうがは自分で入れました。コーレーグスを入れるとおいしい。
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